鳳昶さんと見た月下美人

15年くらい前だったでしょうか。

我が家の月下美人に蕾が沢山ついた年がありました。

ほんの数時間しか咲かない月下美人の開花の瞬間を見ましょうということになり鳳昶さんと智浩さんとご一緒にその時を待ったことがありました。

もしかしたら咲くのは翌日かもしれないというのに蕾の膨らみ具合から開花をその日と予想して私達は待っていました。

確か8時頃からだったでしょうか徐々に蕾は解け始め辺りに芳香が立ち籠め私達はうっとりと真っ白な大きな花が掌位になるまで息を詰めて見惚れていました。

月下美人の花には今は亡き鳳昶さんの思い出が重なります。

その後月下美人は蕾を付けなくなり余り綺麗でもない枝と葉は時々水をあげるものの殆ど注目を浴びることなく部屋の隅にありました。

昨年のお稽古場の改装でいよいよ居場所を無くした月下美人は遂にベランダに移動となり１年半。

すっかり忘れ去られた存在となった月下美人ですが昨日からの熱暑に樹々もさぞかり水を欲していることでしょうと思い夕方になり隅々まで丁寧にジョウロで水を撒きながら誘われるように月下美人の下の方を見ますと。



こんなに嬉しいことはありません。

鳳昶さんが亡くなってから7月30日で丸10年が経ちましたが、まるでそこに鳳昶さんがいらっしゃるかのように懐かしく温かくぽっかりと燈が灯ったようなのです。